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mudai

しかし、予想はいい意味で裏切られる。テーマはいきなり「文体」だ。

「ぼくは、とにかく書き直しをよくします。何度も何度も繰り返し、繰り返し書き直します。私の妻は私の仕事にはおおむね好意的で、批評めいたことはまず口にしないのですが、以前、こういったことがあります。『もしもあなたが最初に書いた、そのまんまの形で世間に発表する機会が一度でもあったらどんなにいいでしょうね』と。」

伊集院は質問する。

「先生のおっしゃる文体は、こういう文体というものがまずあって、それに近づけて書き直しをされるわけですか、それともそういうものはなくて、まず書いてそれを修正する中で結果的に文体ができあがっていくんですか」

この質問を聞いただけで彼がどういう姿勢でこの話に臨んでいるかがわかる。彼はひるんでいない。本気である。おべんちゃらや追従を捨てて、正面から大作家に向き合おうとしている。まことによい度胸である。私は倚子に腰を下ろす。

「それは後の方ですね。最初から文体というものはないんです。僕の知っている作家に三島由紀夫という人がいて、彼は最初から何を書くかがほとんど決まってたんですね。実際に書く時に、彼はそのイメージに装飾をほどこすようにして作品を完成させていった。でもぼくはとにかく最初はこういうものを表現したいという漠然としたイメージのようなものはあるんだけれども、それが何なのかはよくわからない。だからとりあえず書いてみる。でも読み直すとぜんぜん書けてないし、だいいち、読者はなにが書いてあるかわからないだろう。だから、ああでもないこうでもないと表現を変え、視点を変えて、延々と書き直すことになるわけです。その作業を繰り返して、最終的にやっとなんとか読めるものになり、その過程で自分なりの文体というものができあがっていくんです。」
「最終的に読者に伝わる文体ができると」
「でも実は、私の文章は読み手にあんまりよく伝わらないみたいで、難解とか、むずかしいとか、よくいわれるし、本としてもあまり売れないんですよ」(笑)

大江健三郎v.s.伊集院光1 - M17星雲の光と影 - 楽天ブログ(Blog)より転載


最初からイメージできているシーンを撮って・作り上げていく人がいる。
自分でも良く判らないけど、なんとなくというシーンを撮って・撮って・撮って段々とイメージを練り上げていく人もいる。
by nullpo_orz | 2009-11-10 12:46 | 思っていること

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by やっ
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