a href="http://d.hatena.ne.jp/develop_it/20090831/p1" target="_blank">水洗は何故必要なのか:夏のコラム, 現像の基礎<
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水洗処理は感光材料面から定着液を洗い流すだけのものではありません。その内実を探りましょう。
水洗のメカニズム
定着後のフイルムや印画紙には、定着液だけではなく定着反応後の物質が残留しています。それらは、現像後の「画像」に悪影響を与える物質なので、写真の保存性向上のために水洗による除去が必要なのです。
合成樹脂で出来たフイルムや合成樹脂でコーティング加工されたRC印画紙表面は、薬液や水が浸透する素材ではありません。定着処理後、表面の薬液は数秒間の簡単は水洗浴程度で除去されます。しかし、乳剤層内部レベルでは事情が異なり、乳剤中に残留した「チオ硫酸銀錯塩」は表面の洗浄だけは除去できません。
水より比重の重い定着液や「チオ硫酸銀錯塩」はその比重差によって、より比重の低い水中に拡散しようとして乳剤表面にしみ出てきます。
それは瞬時に行われる事ではなく、時間を要する反応です。
水洗とは、その染み出てきた不要物を洗い流すと言う工程になります。
流水の強さは水洗効率と比例するものではなく、適度の水置換効率ある水洗状態、つまり、拡散したチオ硫酸銀錯塩が澱む事なく新鮮な水洗水と入れ替わるような流水で行う事が必要になります。
水洗の工夫例・・
除去すべき不要物質は水より比重が重く水洗容器の下方に溜まる傾向にあるので、それを排出し、新鮮な水の置換を促進する構造で水洗セットを工夫する事が必要です。
本水洗の前に予備水洗を行う。まず、別の容器で表面だけの定着液を洗い流し、次に流水の本水洗に入れる。*1
水洗容器を傾けたり、下流の方に穴を開けるなどして流水方向を促進する。
ホースなどを利用して、水洗容器の底下方より注水して、底に不要物が澱むのを防ぐように強制的な水流を作る
本水洗中、適時に水洗容器のすべての水を捨てて、完全に入れ替えると効率がさらに良くなります。*2
印画紙水洗の留意
印画紙乳剤面が流水に接しているが事が必要であり、単に水中に浸っていれば良いということではありません。特に、重ねて何枚も一度に水洗する場合は、水洗中での印画紙の重ね方の順番入れ替えや撹拌が必要です。
大量の枚数を処理する場合、1枚処理の水洗時間より長めの設定が必要になる事もありますが、水洗の完了度の見極めが難しくなりますので少ない枚数で小まめに水洗するか、もしくは段階水洗で水洗効率を上げましょう。
RC印画紙は構造上、本来、水洗を短時間で行う印画紙です。水洗前のプール容器に何時間も放置する事は避けましょう。
水洗が効率よく行われるには「正しい水洗の前の正しい定着処理」が必要です。
定着処理が適正に行われ、反応物質が水溶性物性になっていなければ長時間水洗しても除去できないのです。
保存性の考慮には、処理工程の総合的な取り組みが必要となります。
*1:この作業だけで、90%の不要物質が除去されると言われています。つまり、残り10%の除去に時間を要すると言うことです
*2:例えば、水洗時間が20分の場合、1/3分割して、7分毎に入れ替えを行います。